兵庫県市川町の瀬加地域(せかちいき)が、地域の農業を持続可能なものへと変えるための具体的な計画、「地域計画」を策定しました。
高齢化による離農や遊休農地の増加といった深刻な課題に立ち向かう、未来志向のこの計画は、地域農業の明るい展望を示すものとして注目されます。
瀬加地域の「今」:待ったなしの課題
中山間地域に位置する瀬加地域は、水稲や大豆などを主要作物とする一方、農業を取り巻く環境は非常に厳しい状況です。
高齢化の波と後継者不足: 農業経営体の約4割(72経営体中31経営体)が75歳以上の経営主であり、後継者の不在が深刻です。集落営農組織も高齢化により、今後、耕作面積の縮小や解散・休止が懸念されています。
遊休農地の増加: かつて整備されたほ場(田畑)でも、獣害や水路の老朽化、そして高齢化を背景に遊休農地が増加しています。
未来への目標:「集積率80%」で実現する持続可能な農業
瀬加地域では、この状況を打開するため、令和16年度を目標に「農地の集積率を現状の47.4%から80%へ」と大幅に引き上げることを掲げました。
「農地の集積率」とは?
ここで掲げられた「農地の集積率」とは、地域全体の農地面積のうち、効率的かつ安定的な農業経営を担う「認定農業者」や「集落営農組織」といった中心的な担い手が利用(耕作)している農地が占める割合を指します。
この割合を高めることは、分散した農地を一つにまとめ、大規模で効率の良い農業を実現するために極めて重要です。
瀬加地域では、集積率を80%にすることで、労働力や機械を効率よく使い、地域農業の生産性と安定性を高めることを目指します。
目標達成に向けた3つの具体的な柱
この高い目標達成に向け、瀬加地域では以下の3つの柱を中心に具体的な取り組みを進めます。
農地の「担い手」への集約を加速
農地の効率的な利用を目指し、農地中間管理機構(農地バンク)の活用を積極的に進めます。
土地所有者の理解を得ながら、遊休農地を含めた農地を、認定農業者や集落営農といった地域の担い手へ集積・集約化していきます。
また、ほ場整備が未実施の農地についても、所有者の了解を得た上であぜの撤去など、簡易な整備を検討し、担い手が作業しやすい環境づくりを目指します。
地域ぐるみで「後継者・新規就農者」を育成
農業を担う「人」を確保・育成するため、体制を強化します。
後継者育成の強化: 認定農業者や集落営農、さらには自作農家(一般農家)の後継者とオペレーターの育成を、行政(県・町)やJAと連携して推進します。
新規就農者の呼び込み: 上牛尾地区では、有機農業者が多く移住している特性を活かし、地域づくり協議会による農業体験を継続実施。
これを移住や新規就農へつなげる活動を強化します。
環境に優しい農業と地域一体のインフラ管理
地域特有の課題解決と環境配慮を両立させる取り組みも進めます。
獣害対策の強化: イノシシやシカの被害を防ぐため、防護柵の設置と、迅速な対応のための体制構築、さらには捕獲人材の確保・育成に力を入れます。
耕畜連携: 地域で生産された飼料作物を畜産農家へ供給し、その家畜排せつ物由来の堆肥を地域内の担い手へ供給する仕組みの構築を検討し、持続的な資源循環を目指します。
省力化と負担軽減: 多面的機能支払制度を活用し、畦畔管理などの地域活動の負担を軽減。また、スマート農業の導入による省力化も図ります。
この瀬加地域の取り組みは、全国の中山間地域が抱える課題解決のモデルケースとしても期待されます。
「地域全体で農地を守り、未来へつなぐ」という強い意志のもと、市川町・瀬加地域の農業は新たな一歩を踏み出します。
































































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