コロナ感染拡大がつづく、2021年9月。
世界的にもワクチン接種が進んでいますが、併せて新たな脅威となる変異株の話題。
アルファやデルタといった、いわゆるWHOラベルがギリシャ文字の半分の12に達した等、報じられていますが変異株がどれぐらいあるかご存知でしょうか。
変異株の種類はいくつ?
新型コロナウイルスの変異についてはPANGO系統(pango lineage)と呼ばれる国際的な系統分類命名法で付けられた呼称が存在します。
「【コロナ変異株】オメガで足りる?ギリシャ文字」という記事でも紹介していますが、アルファ株やデルタ株という名称は、膨大な数のPANGO系統に対してWHO(世界保健機関)が「脅威」となる場合に別途、分かりやすいWHOラベル(ギリシャ文字名)を行ったもの。
メディアでも報道される○○株といった名称は、2021年9月時点で最新は”ミュー株”で12番目。なお、元となるPANGO系統(株)の数は2021年9月現在1300種以上が存在。
漠然とPANGO系統は「新型コロナウイルスに関して用いられる国際的な系統分類命名法」と表現されることが多いのですが「どんな種類がある?」「特徴は?」など気になったので公開データから変異株について少し深堀りしてみます。
PANGO系統とは
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のゲノム配列に対して、最も可能性の高い系統を識別可能なSARS-CoV-2組換え系統の命名規則に従って命名されたものをPANGO系統名と呼びます。
PANGO系統の歴史
新型コロナをさかのぼってみると日本では2020年1月頃から話題になっていましたが、世界で一番早く発見されたのはPANGO系統「B」で2019年12月24日のクリスマスイブのことでした。
次いで、すべての根源となるPANGO系統「A」が設定されたのは2019年12月30日のこと。
PANGO系統の確認数と累計
PANGO系統の命名順
こうしてみると感染拡大をしている株「B」を確認すると大元となる「A」の存在が判明したということでしょうか。
現在WHOでVOC(懸念すべき変異株)認定されているガンマ(P.1)を除く、アルファ、ベータ、デルタはそれぞれB系。
PANGO系統 | 年月日 | 説明(原文訳) |
B | 2019/12/24 | 2つ目の主要なハプロタイプ(発見されたのはこれが初めて |
A | 2019/12/30 | パンデミックの根源はA系統にある。中国発の配列が多く、東南アジア、日本、韓国、オーストラリア、米国、欧州など、世界各地に輸出されているのがこの系統である。 |
B.1.1.285 | 2020/1/9 | 日本/アメリカの系統 |
B.1.221 | 2020/1/14 | ヨーロッパの系統 |
R.1 | 2020/1/14 | B.1.1.316.1の別名、B.1.1.316にさらに3つのスパイク変異を加えたサブ系統で、多くの国で流通している。 |
B.4 | 2020/1/18 | イランの系統と世界的な輸出 |
B.12 | 2020/1/20 | 日本の系統 |
B.1.2 | 2020/1/21 | 米国 |
B.3.1 | 2020/1/21 | ウェールズの系統 |
B.57 | 2020/1/22 | 主にスコットランド人 |
Aから変異し、枝分かれし、現在は1300種以上になっていますが9月現在、A.系が34種であることに対して、B系は1137、C系は45、D系は4といった具合に圧倒的な数を誇るB系。
さて公開されている「PANGO系統別リスト」では系統(Lineage)、最短確認日(Earliest date)。由来などと併せて流行している国を表す(Most common countries)の情報が表示されています。
デルタ株(B.1.617.2)であればイギリス46.0%、アメリカ合衆国21.0%、インド5.0%、デンマーク4.0%、オランダ3.0%、といった具合。
いくつかのスパイク突然変異を伴う主にインドの系統ですが、その流行はイギリスがもっとも多いことを示しています。
日本でしか流行していない系統がある
膨大なリストを確認してみると「日本系統」なる表示を発見することができ、日本でしか流行していない系統もあることが分かります。
PANGO系統 | 流行の比率 | 確認年月日 | 説明 |
A.16 | 日本100.0% | 2020/2/15 | 日本の系統 |
B.1.1.214 | 日本100.0%、韓国0.0%、オーストラリア0.0%、中国0.0%、ニュージーランド0.0% | 2020/2/22 | 日本 |
B.1.1.283 | 日本100.0% | 2020/3/16 | 日本 |
B.1.1.284 | 日本100.0%、韓国0.0%、香港0.0%、オーストラリア0.0%、タイ0.0% | 2020/5/22 | 日本 |
B.1.1.285 | 日本76.0%、アメリカ合衆国17.0%、メキシコ4.0%、グアテマラ1.0%、イタリア1.0% | 2020/1/9 | 日本/アメリカの系統 |
B.1.1.465 | 日本100.0% | 2020/4/23 | 日本の系統 |
B.1.1.48 | 日本99.0%、イギリス1.0%、アメリカ合衆国0.0% | 2020/3/27 | 日本 |
B.12 | 日本98.0%、マレーシア2.0%、米国1.0% | 2020/1/20 | 日本の系統 |
B.5 | 日本85.0%、オーストラリア8.0%、アメリカ合衆国8.0% | 2020/2/5 | 日本の系統 |
このあたりが世界規模のパンデミックとなった場合、日本株と呼ばれることがあるのかどうかは不明ですが、世界的に拡大している新型コロナはどこまで変異を続けるのか。
次ページ:「もっと詳しく。PANGO系統(命名ルール)とPangolin」
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