オーバーツーリズムを避ける動きが広がる中、日本の田舎の魅力に改めて注目が集まっています。
自然豊かな風景が広がり、民俗学の父・柳田國男の生誕地としても知られる福崎町は、いまや外国人旅行者にとっても魅力的な観光地となりつつあります。
令和6年度(2024年)には、過去最高となる707,221人が福崎町を訪れました。前年からの微増という結果ですが、その背景には妖怪コンテンツを中心とした観光戦略の進化と、地道な取り組みの成果があるようです。
過去10年間の観光客数の推移:妖怪コンテンツが成長を牽引
福崎町では過去10年間で観光客数が約3倍にまで増加。平成24年(2012年)の23万人から、令和6年には70万人を突破しました。
特に、妖怪ベンチや天狗・河童といったユニークな仕掛けが整備された平成28年以降、観光客の増加が加速しています。
この動きは単なる“妖怪ブーム”にとどまらず、妖怪を通じた福崎独自の文化として着実に根づきつつあります。
年度 | 観光客入込数(人) | 備考 |
H24 | 234,817 | |
H25 | 248,072 | ※H26.2 河童装置設置 |
H26 | 336,571 | |
H27 | 346,680 | |
H28 | 414,987 | ※H28.4天狗装置設置 |
H29 | 397,198 | ※H30.3妖怪ベンチ設置(9基) |
H30 | 418,037 | ※H31.3妖怪ベンチ増設(5基増設 計14基) |
H31/R1 | 416,024 | ※R01.10観光交流センター2ヵ所OPEN、R01.11末~エルデホール休館、新型コロナウイルスの影響による休館・時短営業有 |
R2 | 408,360 | ※福崎まつり中止 新型コロナウイルスの影響による休館・時短営業有 |
R3 | 489,088 | ※R4.1~文珠荘リニューアルOPEN |
R4 | 604,379 | ポストコロナ、メディア活用、イベント実施、コンテンツ造成等 |
R5 | 701,298 | ポストコロナ(夏まつり・秋祭り等)、メディア活用、イベント実施、コンテンツ造成、インバウンド誘客等 |
R6 | 707,221 | メディア活用、イベント実施、コンテンツ造成、インバウンド誘客等 |
2025年は柳田國男生誕150周年
そして、2025年には柳田國男の生誕150周年という節目を迎えます。これを機に、福崎町では「妖怪ブーム」を「妖怪文化」としてより深く定着させ、町全体でその世界観を表現するような取り組みが期待されています。
妖怪文化に触れることで、訪れる人々が日本の民俗に対する理解を深め、楽しみながらその奥行きに親しんでいく——そんな観光地としての福崎町の姿が目指されています。
課題と展望:天候リスクへの対策を
令和6年度の伸び率は+0.8%とやや鈍化。これは記録的な猛暑や週末の雨といった天候要因が影響した可能性があります。また、令和5年度が+16.0%の高成長であったことから、その反動も考えられるでしょう。
今後の安定した成長には、天候に左右されにくい屋内施設や通年で楽しめるイベントの拡充が鍵となるでしょう。
福崎町の未来へ
福崎町の観光戦略は、柳田國男の思想と現代のクリエイティブな仕掛けが融合したユニークな取り組み。
2025年の節目をきっかけに、“妖怪”を通じた文化的魅力をさらに発信し、多くの人に「いい塩梅の田舎時間」を楽しんでもらえる場所として進化していくことでしょう。
COMMENT
「妖怪文化が育む福崎町の観光 ― 柳田國男生誕150周年を迎える2025年に向けて」についての追加情報、感想などをコメントまでお寄せください。