11月下旬頃より日々発表される新型コロナの陽性者、感染数の発表に一喜一憂されている方も多いと思います。
緊急事態宣言以前と比べると検査方法であったり対処方法が確定されたためか中等症以上ではない限りすぐに退院されている患者さんも多いのですが、「累計」という言葉になんだか被害が拡大しているような印象を受けるのも事実。
ちなみに厚生労働省では前日までの自治体公表分の累計を発表していますが12月10日現在、前日までの日本国内の感染、陽性者事例としては
166,928名(累計)
さてこのうち亡くなられた方は2,464名となっており、割合にすると1.486%(100人のうち1.5人)程度が亡くなられているという状況。
感染者として累計は公表されているのですが退院者数というのは明記されておらず、数字のインパクトからとんでもなく感染が拡大している(ように)印象を受け、入院者用の病床についても不足の話題が目に付きますが実際の状況はどうなのでしょう。
感染症法に規定される「二類感染症」相当
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は感染症法で「二類感染症」相当とされており、毒性や治療法、感染力などが明らかになっていない感染症については感染患者は「入院」が義務付けられているのも不安や注目を集めている要因でしょう。
その他の「二類感染症」
感染症 | 死亡率 |
急性灰白髄炎(ポリオ) | 麻痺型となった小児の約4%、球麻痺合併例や成人で約10%(ほとんどは、急性呼吸不全によるもの) |
結核 | 13.7%(※2018 2303/16789) |
ジフテリア | 約10%(5歳以下や40歳以上の年齢の場合は重くなりやすく、最大で20%程度) |
重症急性呼吸器症候群(SARS) (病原体がベータコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る) | 約14~15%(年代によって0~50%) |
中東呼吸器症候群(MERS) (病原体がベータコロナウイルス属MERSコロナウイルスであるものに限る) | 約35%(検査で確定診断された患者のみの数値) |
鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9) | 50%以上 |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19) ※「二類感染症」相当 | 約1.5%(※2020/12/9時点) |
緊急事態宣言発令の2020年4月頃は得体の知れない新感染症に陽性になったら入院、というような状況でしたが2020年10月14日に「新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令の一部を改正する政令」が施行されました。
新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令の一部を改正する政令
令和2年 10 月 24 日から施行
趣旨
今般、これまでに把握されている医学的知見等を踏まえ、季節性インフルエンザの流行時期も見据え、医療資源を重症者や重症化リスクのある者に重点化していく観点から、新型コロナウイルス感染症に係る入院の勧告・措置について見直しを行うこととする。
入院の勧告・措置の対象
65 歳以上の者、呼吸器疾患を有する者その他の厚生労働省令で定める者
(1)以下のいずれかに該当する患者
- ① 65 歳以上の者
- ② 呼吸器疾患を有する者
- ③ 上記②に掲げる者のほか、腎臓疾患、心臓疾患、血管疾患、糖尿病、高血圧 症、肥満その他の事由により臓器等の機能が低下しているおそれがあると認 められる者
- ④ 臓器の移植、免疫抑制剤、抗がん剤等の使用その他の事由により免疫の機能 が低下しているおそれがあると認められる者
- ⑤ 妊婦
- ⑥ 現に新型コロナウイルス感染症の症状を呈する者であって、当該症状が重度 又は中等度であるもの
- ⑦ 上記①から⑥までに掲げる者のほか、新型コロナウイルス感染症の症状等を 総合的に勘案して医師が入院させる必要があると認める者
- ⑧ 上記①から⑦までに掲げる者のほか、都道府県知事が新型コロナウイルス感 染症のまん延を防止するため入院させる必要があると認める者
(2)上記(1)以外の者であって、当該感染症のまん延を防止するため必要な事項として厚生労働省令で定める事項を守ることに同意しない者
- ア 指定された期間、指定された内容、方法及び頻度で健康状態を報告すること
- イ 指定された期間、指定された場所から外出しないこと
- ウ 上記ア及びイに掲げるもののほか、新型コロナウイルス感染症のまん延を防止するため必要な事項
10月に改定された政令によると「二類感染症」相当である新型コロナウイルス感染症ですが誰でも彼でも入院というわけではなく、「重症化リスクのある方」と「重症化リスクの低い方」によって入院かそうでないかを区別するようになりました。
感染拡大の目安として病床の利用率
兵庫県では「無症状、軽症=宿泊療養(ホテルなど)」「中等症以上=新型コロナ専用病床」を確保しており症状や条件よって入院、入所となります。
恐れるべき新型コロナウイルス感染症ですが新規陽性者数のみではなく重篤化しやすい方=入院数を見ることで感染状況がある程度把握できるのではないかと思われます。
2020/3/11~2020/12/8
こうして見ると病床の利用としては4月19日頃に第一波の山、8月2日頃に第二波の山がありますが青折れ線グラフの新規陽性の増加に関わらず、同数程度の退院(オレンジ折れ線)があり280床程度(中等症以下)を超えていない状況で抑えられていたことが分かります。
気になる第三波
グラフを見ると10月末ごろからの新規陽性者が増え、それにともなって病床利用(赤棒グラフ、緑棒グラフ)の利用が増えていますが連日100人を超えている状況ですが中等症以下については最大441/561(確保数)(11/21)で横ばいの状況ですが、重症者用については微増中なのが気になるところ。
兵庫県では11月11日の時点で重症対応 110 床、中軽症対応 561 床の計 671 床を確保。病床の利用数からいうとまだ余裕があるようにも思えますが、「実際の運用については重症対応 90 床程度、中軽症対応 410 床程度の計500 床程度」を見込んいる(「新型コロナウイルス感染症に係る兵庫県対処方針(抄)」)ということで中軽症対応については想定以上(圧迫)になっています。
新規陽性と病床利用率
671床確保の公表があった11月11日以降の新規陽性者数と病床の利用率をグラフで表すと以下のようになります。
中等症以下向けの病床561床に対して(緑折れ線)は11月21以降、約78%前後で推移(横ばい)。
重症者向け病床110章については12月8日時点で38%程度ですが微増(赤折れ線)。宿泊療養(無症状、軽症者向け)は698室に対して約40%の利用数となっています。
現状では中等症以下で入院が必要となる「65 歳以上の者、呼吸器疾患を有する者その他の厚生労働省令で定める者」の陽性者の増減が病床の逼迫について大きくかかって来ます。
兵庫県より
県内の新規感染者はクラスターの発生等により、1週間平均・1日100人を超える状況が続いており、今ここで、感染拡大を食い止めなければなりません。
県民の皆さん自身や大切な生命・健康を守るため、一人一人が「うつらない・うつさない」との強い思いで取り組むことが大切です。一層のご理解・ご協力をお願いします。
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