気に入った音楽や出版物など、ネットで見れる、落とせる(ダウンロード)できるからOK!?
好きなアニメやコミックなどインエターネット上にあふれるコンテンツの数々。
文化庁は著作権法について被害が顕著ですでに法整備されている音楽・映像の分野に加え、著作物全般について、一定の要件の下、侵害コンテンツをダウンロードする行為を違法化・刑事罰化する法改正を行い(「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律」(令和2年法律第48号))、「侵害コンテンツのダウンロード違法化」に関する改正が2021年1月1日から施行されました。
改正の概要
現行法上では著作権者の許可なく著作物(全般)をインターネット上にアップロードすることは違法、違法にアップロードされた音楽・映像を、違法にアップロードされたことを知りながらダウンロードすることは違法となっていましたが、今回の改正では違法にアップロードされた著作物へのリンク情報を集約した「リーチサイト」を規制し、一定の要件の下で違法にアップロードされた著作物(漫画・書籍・論文・コンピュータプログラムなど)を、違法にアップロードされたものだと知りながらダウンロードすることが違法となります。
従来(2020/12/31まで) | ・著作権者の許可なく著作物(全般)をインターネット上にアップロードすることは違法 ・違法にアップロードされた音楽・映像を、違法にアップロードされたことを知りながらダウンロードすることは違法 |
改正後(2021/01/01~) | ・違法にアップロードされた著作物へのリンク情報を集約した「リーチサイト」を規制する((ア)サイト運営行為と、 (イ)リンク提供行為の両方を規制する) 【リーチサイト対策】 ・違法にアップロードされた著作物(漫画・書籍・論文・コンピュータプログラムなど)を、違法にアップロードされたものだと知りながらダウンロードすることを、一定の要件の下で違法とする 【ダウンロード違法化】 |
文化庁「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律 資料」
※赤文字、赤枠部分が違法
リーチサイト対策(※)
【施行日:令和2年10月1日】
侵害コンテンツに殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト・アプリ、主として公衆による侵害コンテンツの利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト・アプリについては違法となり規制対象。
リンク提供者 | ・民事措置(著作権等を侵害する行為とみなして差止請求・損害賠償請求を可能とする) ・刑事罰(3年以下の懲役・300万円以下の罰金(併科も可))【親告罪】(※)故意犯のみ処罰 |
サイト運営者 アプリ提供者 | ・刑事罰(5年以下の懲役・500万円以下の罰金(併科も可))【親告罪】 (※) 侵害コンテンツへのリンク提供等を認識しつつ放置するなどの場合には、個々のリンク提供等について民事責任を負う(権利者は サイト運営者等に対して差止請求が可能となる)。【第113条第3項】 (※) いわゆる「プラットフォーム・サービス提供者」には、基本的に今回の規制は及ばない。 |
リーチサイト・リーチアプリの定義
文化庁「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律 資料」
侵害コンテンツのダウンロード違法化(※)
【施行日:令和3年1月1日】
民事措置 | 刑事罰 | |
対象著作物・対象行為 | 違法にアップロードされた著作物全般 | 違法にアップロードされた著作物全般で、正規版が有償で提供されているもの |
【除外①】漫画の1コマ~数コマなど「軽微なもの」は対象外(※)スクリーンショットを行う際の違法画像等の写り込みについても違法とはならない (法第30条の2により措置) | ||
【除外②】二次創作・パロディは対象外 | ||
【除外③】 「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合」は対象外 | ||
主観要件 | 違法にアップロードされたことを知りながらダウンロードする場合が対象 (※) 重過失によって違法にアップロードされたことを知らなかった場合も、対象とはならない | |
常習性 | 継続的に又は反復して行う場合が対象 | |
法定刑の水準 | 2年以下の懲役・200万円以下の罰金(併科も可) | |
親告罪の扱い | すべて親告罪(権利者の告訴が必要) |
【除外①】軽微なもの」は対象外
- ・数十ページで構成される漫画の1コマ〜数コマのダウンロード
- ・長文で構成される論文や新聞記事などの1行〜数行のダウンロード
- ・数百ページで構成される小説の1ページ〜数ページのダウンロード
画質が低く、それ自体では鑑賞に堪えないような粗い画像をダウンロードした場合には、「軽微なもの」と認められる。
文化庁「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律 資料」
【除外②】二次創作・パロディは対象外
二次創作者が原作者の許諾なくアップロードした二次創作物については、それが違法にアップロードされたものだと知りながらダウンロードしたとしても、違法とはならない。
文化庁「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律 資料」
【除外③】特別な事情がある場合
・詐欺集団の作成した詐欺マニュアル(著作物)が、被害者救済団体によって告発サイトに無断掲載(違法アップロード)されている場合に、それを自分や家族を守る目的でダウンロードすること。
・無料の大学紀要に掲載された論文(著作物)の相当部分が、他の研究者のウェブサイトに批判とともに無断転載(引用の要件は満たしていない=違法アップロード)されている場合に、その文章を全体として保存すること(正しい知識を得るためには、その批判文と批判対象の論文をセットで保存する必要)
・有名タレントのSNSに、おすすめイベントを紹介するために、そのポスター(著作物)が無断掲載(違法アップロード)されている場合に、そのSNS投稿を保存すること(有名タレントがイベントをおすすめしている事実とポスターをセットで保存する必要)←ポスターの著作権者が黙示に許諾していると認められる場合は、そもそもアップロードが違法とならないため、当然、ダウンロードも違法とならない。
著作物の円滑な利用を図るための措置
【施行日:令和2年10月1日】
① 写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大
スクリーンショットやインターネットによる生配信などを行う際の写り込みも幅広く認めるなど、規定の対象範囲の拡大。
② 行政手続に係る権利制限規定の整備(地理的表示法・種苗法関係)
既に、特許審査手続等においては迅速・的確な審査等に資するよう、権利者に許諾なく必要な文献等の複製等ができることとなっているところ、(ⅰ)地理的表示法(GI法)に基づく地理的表示の登録、(ⅱ)種苗法に基づく植物の品種登録についても、同様の措置。
③ 著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入
著作権者から許諾を受けて著作物を利用する権利に関し、著作権が譲渡された場合の譲受人などに対しても対抗すること(利用の継続を求めること)ができる仕組みを導入。
著作権の適切な保護を図るための措置
【施行日:令和3年1月1日】
④ 著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化
裁判所があらかじめ実際の証拠書類を閲覧した上で提出命令発出の要否を判断することを可能とし、実際の書類を見て判断する際に専門委員(大学教授など)のサポートを受けられるようにする。
⑤ アクセスコントロールに関する保護の強化
コンテンツの不正利用を防止する「アクセスコントロール」の一つである「ライセンス認証」を不正に回避する行為にも適切に対応できるよう、規定の見直し。
その他
【施行日:公布日から1年以内で政令で定める日、令和3年1月1日】
プログラムの著作物に係る登録制度の整備(プログラム登録特例法)
訴訟等での立証の円滑化に資するよう、著作権者等が自ら保有する著作物(訴訟等で係争中のもの)とプログラム登録がされている著作物が同一であることの証明を請求できることとする(これにより、登録による事実関係(例:創作年月日)の推定効果を確実に享受できる)とともに、国及び独立行政法人が登録を行う場合の手数料免除規定を廃止。
概要にについて記載。詳細は文化庁「令和2年通常国会 著作権法改正について」ページをご確認ください。
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