「加西のぶどうといえば、ベリーA」――
そう口にする方も、地元兵庫県まんなか地域にはまだ多くいらっしゃいます。
兵庫県加西市で長年愛されてきた黒ぶどう品種「ベリーA」(正式名称:マスカット・ベーリーA、※ベリーA )。かつては夏から秋にかけて家族の集まりやおやつ、運動会のお弁当にも登場するおなじみの味でしたが、近年、その姿は消えつつあります。
そんな状況を変えたい!と、高校生、大学生、そして地域全体が手を取り合い、「ベリーA」に新たな命を吹き込むプロジェクト「兵庫リブランディングプロジェクト」が始動。
栽培が難しく「希少品種」となりつつあるこのぶどうを、次世代へとしっかりと引き継ぎ、地域の活性化と新しい未来を創造する、その活動に密着しました。
姿を消しつつある「加西ベリーA」の現状
ベリーAは生食用・醸造用に使われ、赤ワイン用ブドウとしては日本でトップの生産量を誇る日本固有の品種。
甘く濃厚な果汁と懐かしい風味が特長ですが、栽培の難しさや販売価格の安さから、農家が敬遠し、今や「希少品種」となりつつあります。
そんな中、兵庫県立播磨農業高校の園芸科果樹コースでは、育成の難しさから教材としても適しているため、ベリーAを育て続けています。
しかし、収穫しても直売会で売れ残ってしまい、廃棄される量も看過できない状態になっているのだそう。
高校生が知恵を絞って完成!ベリーA活用パン「チョベリパン」
「このぶどうを無駄にしたくない!」という想いから、播磨農業高校の生徒たちが立ち上がりました。彼らが丹精込めて栽培したベリーAを使ったパン、「チョベリパン」の誕生です。
ブランド力アップと廃棄ロス削減を目指し、生徒たちは試行錯誤を重ねました。ベリーAを小麦粉に混ぜ込んだり、粉末にしたりと工夫を凝らし、誰にでも食べやすいパンを開発。
パンになったベリーAは、同校のOBであるブドウ農家さんたちからも「ブドウの風味がしっかり出ている」と評価されています。
7月12日、13日には「ひょうご楽市楽座」にも出展し、万博でにぎわう県内外・海外からの来場者に向けて、加西ベリーAの魅力を力強く発信しました。
地元のぶどうを未来へ繋ぐ「兵庫リブランディングプロジェクト」
この取り組みは、高校生たちのパン開発にとどまりません。
高校生、大学生、そして地域全体が連携する、壮大な挑戦「兵庫リブランディングプロジェクト」が本格的に動き出しています。
加西市、地元の企業、播磨農業高校、そして甲南大学がタッグを組み、加西市の地域資源であるベリーAに新たな価値を見出すことを目指しています。
単なる商品開発だけでなく、地域活性化、未来を担う起業家の育成、そして新たな販路開拓といった、たくさんのテーマに取り組む「産官学(高大)連携」の地方創生プロジェクトなのです。
昔から大切にされてきたベリーAを次世代に引き継ぐために、高校生と大学生が地域の未来を本気で考えながら活動を進める姿は、とても頼もしいかぎり。
「なくしたくない、この味と歴史」先生の熱い想い
播磨農業高校 園芸科果樹コースの三宅教諭は、長年ベリーAと向き合ってきた一人です。
「甘みもあって皮ごと食べることができる大粒ぶどうに人気が集まる中、ベリーAは厳しい状況にあります。栽培が難しいわりに、販売単価も高くはありません。それでもこの魅力ある品種の歴史と魅力をなくしたくはないんです。」
この先生の熱い想いに応えるべく、甲南大学の学生も加わり、播磨農業高校の生徒さんが育てたベリーAを使った新しい商品開発やPR戦略が、今まさに進められています。
地元で味わえるコラボメニューも登場!
プロジェクトの成果のひとつとして、2025年7月から加西市内にある「えぇもん王国 EK.delicafe」(兵庫県加西市北条町横尾)では、播磨農業高校産のベリーAを使った特別なコラボメニューが楽しめるようになりました。
どのメニューも、高校生が丹精込めて育てたベリーAを主役に、丁寧に作られています。口に運べば、その香り高さと風味に驚くことでしょう。
ベリーAフレトー(750円)
手作りのベリーAシロップをたっぷり使ったフレンチトースト。
ベリーAヨーグルトスムージー(750円)
果汁の風味とヨーグルトのさっぱり感が絶妙な、夏にぴったりのドリンク。
播農ベリーAづくしのチョベリパンセット(850円)
ベリーA粉末を生地に練り込んだパン(チョベリパン)と、サラダなどがセットになったプレートです。
さらに、ふるさと納税のコト体験型返礼品としての展開も検討されており、「食べて応援する」という形で地域活性化の輪が、少しずつ広がりを見せています。
一粒のぶどうが紡ぐ、地域の未来の物語
このプロジェクトは、単に「商品をつくる」こと以上の意味を持っています。
高校生と大学生が地域の農業現場と真剣に向き合い、「どうすればこの大切なぶどうを守れるのか」「どんな未来を創れるのか」を考え抜くことで、「ぶどうを育てる」ことが、地域の文化や誇りを育むことへと繋がっています。
加西で育てられた一粒のベリーAが、地域の未来を創っていく――
そんな物語が今、確かに始まっています。この取り組みを通して、加西のベリーAが再び地域のシンボルとして輝きを放つ日が来ることを期待せずにはいられません。
COMMENT
「加西の誇り伝統ブドウ品種「ベリーA」を未来へ繋ぐ:高校生・大学生・地域が連携する挑戦」についての追加情報、感想などをコメントまでお寄せください。