新型コロナウイルスの陽性判定が行われるにあたってPCR検査というワードを連日お聞きの方は多いと思います。また一般でも購入できる新型コロナウイルス抗体検査キットの話題もでてきました。
PCR検査とは
Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略でウイルスの遺伝子を増幅して検出する方法。ある程度、ウイルスの量がある場合、検出しやすいということで軽症の場合は反応しない(陰性となる)ケースもあります。
GW明けより感染者数という点では落ち着いてきたように思えますがそれでも拡大を防ぐためにより多くの方のPCR検査が必要、なんて声を耳にすることも。
再発?再感染?
兵庫県でも5月16日、退院者の再陽性者が発表されていますが全国的には5月に入っても少ないながらも再陽性者の発表があります。
退院するためには最低でも48時間以内の「PCR陰性判定2回」が必要となりますが再陽性の話題が出た際に可能性として言われるのが
- 1.新たに感染した可能性(→抗体ができていない?抗体があってもかかる新種?)
- 2.陰性であっても実は陽性だった
まだまだ不明な点も多い新型コロナウイルスですが「2」についてはPCR検査に使われる試薬の感度と偽陽性、偽陰性によっておこる問題で試薬の精度が求められている状況。
しかしながら現状ではそうかんたんな話ではないようで。最近自分で検査ができる簡易検査キットも販売されるようになっていますがその陰性、ほんとに陰性ですか?
感度と特異度、偽陽性と偽陰性
感度 | 実際に疾患があるときに、正しく陽性が出る確率 |
特異度 | 疾患がないときに、正しく陰性が出る確率 |
偽陽性 | ウイルス無しにも関わらず陽性 |
偽陰性 | ウイルス保有にも関わらず陰性 |
神奈川県医師会が運営している「かながわコロナ通信:PCR検査の特性と限界(5月12日)」では「PCR検査の感度は高くても高々70%程度」という。つまり30%の人は陽性であっても陰性になるのだそう。
様々なPCR検査用の試薬がありますが「一定の感度」を示せば検査に利用できるようで国立感染症研究所は次のように言います。
ロシュ・ダイアグノスティックス社のキットのE gene、N geneでは、2003年流行のSARS-CoVならびに、今回の新型コロナウイルス 2019-nCoV を区別することはできませんが、現時点(以前の SARS-CoV の流行がない状況)での運用上、本試験陽性で、新型コロナウイルス 2019-nCoV 陽性と判定して問題ないと思われる。
国立感染症研究所「新型コロナウイルス(2019-nCoV)の検出マニュアル:「病原体検出マニュアル 2019-nCoV Ver.2.8」」
ほぼほぼ間違いないけど100%確定ではないよ、ってことみたい。検出マニュアルにある認可を受けている試薬でこの状況ですが最近市販された検査キットの精度はどれぐらいなのか気になるところ。
⼀般社団法⼈⽇本感染症学会が4月17日に公表した「抗新型コロナウイルス抗体の検出を原理とする検査キット 4 種の性能に関する予備的検討」という資料では発売済みの海外4社の市販検査キットについて10名(実際の陽性者5名、陰性者5名)の検査を行いました。
陽性者5名を含む10名について検査を行ったところ
感度 | 特異度 | 陽性的中率 | 陰性的中率 | |
A | 2/5(40%) | 5/5(100%) | 2/2(100%) | 5/8(62.5%) |
B | 0/0(0%) | 5/5(100%) | 0/0(0%) | 5/10(50%) |
C | 3/5(60%) | 5/5(100%) | 3/3(100%) | 5/7(71.4%) |
D | 4/5(80%) | 5/5(100%) | 4/4(100%) | 5/6(83.3%) |
特異度(実際に陰性の場合に陰性の割合)についてはすべて100%のためウイルスを保持していない方が誤って陽性判定になることありませんでしたが陽性者が陽性と判断される感度については0%~80%と大きな開きがあります。
この結果を受けて⼀般社団法⼈⽇本感染症学会では「抗新型コロナウイルス抗体検出キットを当該ウイルス感染症の診断に活⽤することは推奨できず、疫学調査等への活⽤⽅法が⽰唆されるものの、今後さらに詳細な検討が必要であると思われた。」と述べています。
16日0時現在の日本のPCR検査実施人数(厚生労働省)は240,368人。陽性者累計は16,066人、退院者は11,136人。
感度70%ということを踏まえると
16,066人÷0.7=22,951人
が実際の陽性者の可能性もあり、偽陰性(ウイルス保有で陰性)30%^2(回)※9%の確率で陽性でも退院になってしまうのかもしれません。
特異度100%であっても感度が100%でない時点で陽性者が陰性と判断される懸念は大いにあり、再陽性の原因をPCR検査感度に求めるのであれば必然でしょう。
次ページ:「2019-nCoVの検出に使われている試薬など」
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