千葉大学大学院理学研究院の堀田英之准教授と名古屋大学宇宙地球環境研究所長の草野完也教授は、スーパーコンピュータ「富岳」による超高解像度計算によって、太陽内部の熱対流・磁場を精密に再現しました。
本成果では、「富岳」の計算力を用いることで太陽と同じ状況をコンピューター上に再現することが達成できたと考えられ、今後、更なる高解像度計算を引き続き実行していくことで、太陽物理学最大の謎「太陽活動11年周期」の解明に近づくことが期待されます。
太陽は緯度ごとに違う周期で回る差動回転
地球は、どの緯度でも同じ周期(1日)で自転していますが、太陽は緯度ごとに違う周期で回る差動回転をしていることが知られています。
赤道付近は25日程度、極地方は30日程度で自転、つまり赤道が極地方よりも速く自転していることがわかっており、太陽黒点の形成と周期活動にとって重要な役割を果たしていると考えられています。
世界最高解像度、54億点
これまでの数値シミュレーションではスーパーコンピュータ「京」で計算可能な解像度(約1億点)であっても、太陽とは逆に極地⽅が速く⾃転し、⾚道が遅くなる結果になってしまい、実際の差動回転を再現できませんでしたが、今回、これまでの世界最高解像度である54億点で太陽対流層全体を解像した計算で世界で初めて人工的な仮説を用いずに再現することに成功。
国立大学法人千葉大学は、「これまでの計算では、太陽内部の磁場のエネルギーは、乱流のエネルギーに対して小さく、磁場は脇役と考えられてきましたが、今回達成できた計算では磁場のエネルギーは乱流エネルギーの最大2倍以上になっており、これまでの太陽の常識が大きく変わりました。また、本研究により差動回転形成・維持において磁場が大きな役割を持つことを発見しました。」とコメントしています。
数値シミュレーションで再現された差動回転の様子。経度方向に平均した子午面上の値となります。 色は角速度を表し、黄色になるほど速い自転速度(短い自転周期)を示しています。
「富岳」の計算力を用いることで太陽と同じ状況をコンピューター上に再現することを達成したと考えられており、本研究成果は、英科学誌『Nature Astronomy』(13 September 2021)で発表されました。
今後の展望
高解像度計算が太陽の状況をよく再現できることを発見できましたが、まだ「富岳」の全ての力を使ったわけではありません。更なる高解像度計算を引き続き実行していくことで、11年周期の謎解明に挑戦していきたいと考えています。
研究チーム
- 千葉大学 大学院理学研究院 堀田英之 准教授
- 名古屋大学 宇宙地球環境研究所長 草野完也 教授
用語
太陽活動11年周期
太陽黒点数が約11年の周期で変動する現象を指します。現在、その維持機構は明らかになっておらず、太陽物理学最大の謎となっています。
差動回転
天体が緯度ごとに違う自転速度で回転する様子を表します。地球のように全ての緯度で同じ角速度で自転する場合は剛体回転と呼ばれます。
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