知事記者会見 質疑応答の客観的分析
2025年11月19日の兵庫県知事定例記者会見における質疑応答部分を、メディアの質問内容と知事の対応に焦点を当てて客観的に分析します。
1. 若者との対話・人材育成に関する質問
質問内容
読売新聞: 関西学院大学での講演内容と、若者とのミーティングに対する知事の狙い・考え(特に県外流出対策との関連)。
日刊工業新聞: 県内公共職業能力開発施設の利用状況(受講者数)と、県と国が運営する施設の違い。
知事の対応
詳細な情報提供: 講演内容については、若者・Z世代の応援施策(高校の環境整備、大学無償化、奨学金返済支援など)を中心に据えることを明確に回答しました。
政策課題への言及: 若者との対話の狙いとして、県にとっての長年の課題である学生の県外流出を防ぎ、県内の公的機関や企業への就職に関心を持ってもらうことを具体的に示しました。
具体的な数値提示: 職業訓練施設について、県営(5施設)と国営(3施設)のそれぞれの受講者数(約310名、約363名:令和7年度)を提示しました。
れらの質問に対しては、知事の重点施策や具体的な事業に関する情報が求められており、知事は具体的かつ政策的な観点から明確な回答を行いました。
2. 選挙・文書問題とコンプライアンスに関する質問
質問内容
- 読売新聞: 公職選挙法違反の不起訴処分について、「疑義が生じたこと」に対する知事の認識と、今後改めるべき点。また、PR会社との広報業務をめぐる認識の食い違いについて。
- フリー記者A/B(複数回): 公益通報者保護法(改正前)における「3号通報」の体制整備義務の解釈に関する消費者庁の見解と知事の見解の「齟齬」に関する質問。
- 共同通信: 文書問題の告発者情報漏えいに関する告発後の県の追加調査の有無。
- 関西テレビ: 竹内元県議の遺族に対する誹謗中傷について、知事自身が沈静化に向けた具体的な発言(「やめてほしい」など)をしない理由。
知事の対応
- 一貫した見解の繰り返し: 選挙や文書問題全般に関する質問に対し、「適正、適法、適切に対応してきた」という、会見当初からの一貫した見解を繰り返しました。
- 法解釈に関する回答の回避: 公益通報者保護法の「3号通報」の法解釈に関する質問(特にフリー記者からのイエスノークエスチョン)に対し、具体的な法解釈に関する直接的な回答を避け、「これまでの対応は適切であった」「法令の趣旨を踏まえて今後対応していく」という趣旨の回答に終始しました。
- 外部委任の姿勢: 情報漏えいに関する追加調査については、「警察の方に対応をお願いしている」として、捜査機関に委ねていることを強調しました。
- 一般的な論調での回答: 誹謗中傷については、「すべきではない」という一般的な原則論に留め、自身の発言による沈静化の可能性については明確に言及を避けました。
これらの質問は、知事のコンプライアンスや説明責任、政治的姿勢に深く関わるものであり、特に法解釈や過去の経緯に関する追及が目立ちました。
知事は法的・政治的リスクを考慮し、答弁の範囲を厳しく制限し、一貫した定型的な回答を繰り返す傾向が見られました。これは、質問者側との間で「論点のすれ違い」や「回答拒否」と受け取られかねない状況を生んでいました。
3. 地域課題・行政運営に関する質問
質問内容
- 毎日新聞: クマによる被害が相次ぐ中での県の対策と、狩猟免許保持者の減少に対する具体的な育成策。
- 朝日新聞/共同通信/関西テレビ: 播磨灘におけるマガキの大量死による被害状況と、漁業者への具体的な資金繰り支援策(12月補正予算案)。
- 神戸新聞: 昨年から空席が続く副知事人事について、補充の目処。
- 産経新聞: 各会派の予算要望のうち、朝鮮学校への補助金交付に関する知事の考え。
- しんぶん赤旗: 10月の定例会見中止理由とされた「安全面への不安」の具体的な根拠について。
知事の対応
- 即座の対応策提示: マガキの大量死については、被害状況(8割減)の確認と同時に、12月議会での補正予算による「豊かな海づくり資金」を活用した利子補給を検討する具体的な方向性をいち早く示しました。
- 課題解決への意欲: クマ対策として、狩猟免許保持者増加に向けた普及啓発や訓練施設の活用など、地道な取り組みへの意欲を示しました。
- 継続的な方針: 副知事人事については「しかるべきタイミングで熟慮を重ねている」という現状維持の方針を繰り返しました。
- 従来の対応を維持: 朝鮮学校への補助金については、「基礎分」のみを支給し「充実分」は交付しないという現行の対応を継続することを表明し、運営状況を注視する姿勢を示しました。
- 学校環境への配慮: 会見中止の理由については、「児童の安全面の不安や心配の声」を挙げ、学校環境への配慮を最優先した結果であると説明しました。
地域住民の生活や経済に直結する緊急性の高い課題(カキ被害、クマ対策)に対しては、スピード感を持った具体的な施策を提示する姿勢が見られました。
一方で、副知事人事など、政治的な判断が絡む行政内部の課題については、結論を先送りする回答となりました。
まとめ
知事の会見対応は、質問の内容によって大きく傾向が分かれました。
- 政策・事業に関する質問(若者、ハロトレ): 具体的で前向きな回答。
- 危機管理・地域経済に関する質問(カキ、クマ): 迅速な対応策や今後の具体的な検討方針を提示。
- 政治・コンプライアンスに関する質問(公選法、文書問題、誹謗中傷): 一貫した定型的な回答に終始し、直接的な見解や法解釈の言及を避ける対応。
特に、コンプライアンスに関する部分では、質問者の追及に対し知事の回答が抽象的になる傾向が顕著であり、このテーマが会見における最も緊張感の高い部分となりました。




































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