兵庫県が16日に発表した「令和7年度兵庫県病院事業の経営状況」。
県立13病院の当期純損失は約125億円を計上し、累積赤字(欠損金)は753億円まで膨らみました。「赤字の病院」と聞くと不安を覚えるかもしれませんが、ここには命を守るための切実な背景と、私たちの暮らしを支える大切な役割が隠されています。
※トップ画像:兵庫県立はりま姫路総合医療センター(はり姫)
【決算の全体像】収益増加も物価高と人件費増が圧迫
令和7年度の県立13病院全体の経営データは以下の通りです。
患者数の回復や国の補助金により収益は112億円増え、経常赤字自体は前年より約10億円改善しました。しかし、資材高騰や給与改定などのコスト増分が収益改善分をほとんど呑み込んでおり、依然として厳しい経営が続いています。
| 区分 | 令和6年度 | 令和7年度 | 前年度比(増減) |
| 経常収益 | 1,691億4,000万円 | 1,803億7,000万円 | +112億3,000万円 |
| 経常費用 | 1,819億8,800万円 | 1,922億2,300万円 | +102億3,500万円 |
| 経常損益 | △128億4,900万円 | △118億5,200万円 | +9億9,700万円(改善) |
| 当期純損益 | △132億8,300万円 | △125億4,000万円 | +7億7,900万円(改善) |
| 累積欠損金 | △628億5,400万円 | △753億5,400万円 | 125億円悪化 |
決算上の赤字は125億円ですが、ここには県の税金(一般会計繰入金)から入った約196億円のサポート資金が収益として含まれています。
つまり、病院事業単体の自立した収支(実質赤字)で見ると約314億円に達しており、補填なしには成り立たない構造的課題を抱えています。
なぜ費用がかさむのか?赤字が続く3つの背景
物価高・光熱費・医薬品の爆発的な値上がり
診療に必要な医薬品や診療材料費が約35億円増、電気代や業務委託費などの経費が約15億円増加しました。家庭と同じように、病院の現場でも深刻なインフレの影響を受けています。
医療を守るスタッフの確保と人件費
人事委員会勧告に基づく給与改定や医療スタッフの増員により、給与費が約48億円増加しました。人手不足のなかで地域医療の質を維持し、医師や看護師の労働環境を守るための賃上げは避けて通れません。
新病院・大型投資の固定費重圧
はりま姫路総合医療センターや西宮総合医療センターなどの新設・統合、県立がんセンターの建替整備などの投資に伴い、企業債の利払いや減価償却費といった長期的な費用負担が経営を圧迫しています。
「なくてはならない」県立病院
赤字であっても県立病院を維持しなければならない理由は、「民間の病院では対応が難しい不採算・高度医療を一手引き受けているから」
- 24時間365日の救急・高度医療:重症患者の搬送を受け入れる最後の砦。
- 小児・周産期・がん医療:専門設備と多くのスタッフが必要な領域の維持。
- 地域医療のセーフティネット:採算が厳しくても、地域に必要な医療機能を維持。
税金が投入されているのも、単なる赤字の穴埋めではなく「地域住民全員の安心安全を買うための共有費用」と言えます。
これからの課題と私たちにできること
赤字を放置し続けることはできませんが、病院側も手をこまねいているわけではありません。
淡路医療センターや加古川医療センターの一部病棟休止のように、医療スタッフを集中させて効率化を図る取り組みや、スマホで会計が終わる「待たずにラク〜だ」の導入、AI・RPAによる事務作業の削減など、医療DXを活用した業務改革が進められています。
私たち住民にとっても、こうした医療インフラを守るための意識改革が重要です。「軽い体調不良の時はまず地域のかかりつけ医を受診し、必要な時に紹介状を持って県立病院にかかる」という役割分担を一人ひとりが心がけることが、現場の負担を減らし、本当に必要な患者に医療が届く持続可能な社会につながります。
地域になくてはならない病院を守るためには、病院の効率化努力だけでなく、行政の適切なサポートと住民側の正しい利用意識という「三位一体」での支え合いが求められています。

































































